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『回路732』 熊田賢二


・・・さようなら。



朝から気分が悪かった。


外を覗いて見ると空はどんよりと薄暗い雲に覆われていた。

・・・嫌な雲

ふと見ると2羽の鴉(カラス)が木の枝に止まっていた。


この村では鴉は死者の使いと言い伝えられていた。

だけど私は迷信だろうと、よく馬鹿にしていたものだ。


しばらく鴉を見つめていると片方の鴉が言った。



「あなたは1週間後にとても残酷な死に方をするでしょう。」



とうとう私も歳を取ったか?などと思っていた。


それはそうだ、鴉がしゃべっているのだ、だれが信じるか。きっと空耳に違いない!


私は自分に言い聞かせた。

まるで獲物を捕らえるような目で鴉がこちらを見ているように思えた。
汗が額から落ちていた。



「馬鹿馬鹿しい!!」



私は再び自分に言い聞かせた。



その時、鴉が私の目の前まで飛んできた。



私はビックリして尻餅をついてしまった。



「いてててててっ」



パッと再び鴉の方を見ると、鴉は薄暗い雲の中へと消えて行った・・・・。



一体何だったのだろうか?
まだ夢の中なのだろうかと思い、頬をつねってみたが、とても痛く、赤く腫れていた。



首を左右に振り、何もなかったんだと言い聞かせ、仕事に向かった。




私の仕事は医者だ、小さな村の開業医をやっている。

小さな診療所で毎日暇に過ごしている。
患者は1日、2~3人くれば良い方か?
だけどとても充実していた。


私は診療所に行く途中、いつもとは違う風景に気付かなかった。


『杉浦医院 朝10時~午後3時まで』


こう書かれた木で出来た案内板を横目に診療所に入り、仕事着に着替える・・・とはいっても、服の上から白衣を着るだけなのだが。



仕事といっても患者が来ないんじゃ始められないので、いつもの如く机に置いてある小説を読みながら時を過ごしていた。


2時間程たっただろうか
何かおかしい、私はそう思った

人が一人も来ないのだ。

普段仕事をやっている時も患者は来ないのだが、村人が畑に行く際、挨拶をしに、ここに寄って行くはずなのだが・・・。


なんとも言い難い気持ちになり村へと向かった。



村は静まり返っていた。


まるでこの世に私ただ一人になってしまったかのようだった・・・・。


「まさか!?そんなはずは!!」



あちこち走り回ったが村人・・・いいや、それどころか生き物一匹見つけることは出来なかった。


ふと朝の出来事を思い出した。


「あなたは1週間後にとても残酷な死に方をするでしょう。」



空を見上げると雲がとても不気味に笑っているような、そんな感じがした・・・。



続く。
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